馬車をひく男が人質の少女に声をかけた。


「姫君、レスピアンに向かう御心境は?」


可笑しそうな口ぶりにアサーラはそっけなく答えた。


「これ以上ひどいものはないわよ。どうせ死にゆく場なんでしょ」

「はは、死にゆく場か。恐れはないのか」

「何故恐れるの?」

「まったく、気丈な方だ。」


男は楽しげに口笛を吹きながら馬の速度を速めた。

もうすこしで景色が変わりそうだ。



「フィルデラの姫よ、外を見たまえ。これがレスピアンだ」



アサーラの視線の先にはレスピアンの景色が広がっていた。