鬱状態が3、4カ月もつづいたころでしょうか。自宅から歩いて5分くらいの公園で、私は父と二人でいました。
父は立ったまま、ブランコに腰かけた私を見て、こう切り出したのです。
「美樹、いい加減、元気を出さないか─」
そこで初めて、母が私を命賭けで産んでくれたのだという話を耳にしました。
「美樹は、お母さんの命の代わりに生まれてきたんだよ。『子どもを産めば、腎臓がさらに悪くなります』と医師からは止められた。でも、お母さんは強い意志を持って、『どうしても男の子を産みたい』と言って、お前を産んだんだ。
お父さんとしては、彼女の体を思って、産んでほしくなかったんだが、あれだけの覚悟で言われたら、それ以上、何も言えなくなった……。
そんなお母さんの命と引き換えに生を受けたのが、お前なんだよ。
お前は元気になってほしい、やんちゃなお前に戻ってくれ。やんちゃなお前が、お母さんが好きだったお前なんだから……」
私はここで、自分の頬に涙が伝っているのに気づきました。
「もしかしたら僕は、生まれていなかったかもしれないんだ。でも、お母さんは寿命が縮まるのを承知で、身を切って僕を産んでくれた……」
伝っている涙は、母の死後にずっと流しつづけてきた涙とは、別の種類のものでした。
強く生きてほしい─。
その一念で私を産んでくれた母。
それまでの涙は、その母の傍に行きたいのに、自分は行くこともできないという悲しい涙でした。
でもそのときの涙は、母への感謝の涙だったのです。
そして、嬉し涙でもありました。
父は立ったまま、ブランコに腰かけた私を見て、こう切り出したのです。
「美樹、いい加減、元気を出さないか─」
そこで初めて、母が私を命賭けで産んでくれたのだという話を耳にしました。
「美樹は、お母さんの命の代わりに生まれてきたんだよ。『子どもを産めば、腎臓がさらに悪くなります』と医師からは止められた。でも、お母さんは強い意志を持って、『どうしても男の子を産みたい』と言って、お前を産んだんだ。
お父さんとしては、彼女の体を思って、産んでほしくなかったんだが、あれだけの覚悟で言われたら、それ以上、何も言えなくなった……。
そんなお母さんの命と引き換えに生を受けたのが、お前なんだよ。
お前は元気になってほしい、やんちゃなお前に戻ってくれ。やんちゃなお前が、お母さんが好きだったお前なんだから……」
私はここで、自分の頬に涙が伝っているのに気づきました。
「もしかしたら僕は、生まれていなかったかもしれないんだ。でも、お母さんは寿命が縮まるのを承知で、身を切って僕を産んでくれた……」
伝っている涙は、母の死後にずっと流しつづけてきた涙とは、別の種類のものでした。
強く生きてほしい─。
その一念で私を産んでくれた母。
それまでの涙は、その母の傍に行きたいのに、自分は行くこともできないという悲しい涙でした。
でもそのときの涙は、母への感謝の涙だったのです。
そして、嬉し涙でもありました。
