いま、思うのです。

 もしあの時に、私が死ななければならなかったとしたら……。

 きっと私は、死んでも死に切れなかったに違いありません。

 私たちを残して逝ったお母さんの気持ちが、いまになって初めて、わかったような気がします。


 私は今回、この本を、51歳でお母さんと会社をいっぺんに手放してしまったときのお父さんと、36歳で愛する家族を残しこの世を去ったお母さんとの気持ちを思いながら、書き上げました。

 当時の二人の気持ちを想像すると、とても苦しい思いでした。

 そして、本を書き上げようというときに出会った、陸前高田市の10歳の少年。

 あの少年の悲しみは、お母さんを亡くした私の悲しみをなぞるようでした。

 でも、間違いなく言えることがあります。

 あの悲しみから41年経った今、私にとってお母さんとの別れは、本当に意味のあるものだったと、この本を書くにあたり、改めて知ったのです。


 だから、すべてのお母さんたちへ。そして、すべての子どもたちへ。

 この本を贈りたいと思います。

 どうか、みなさんそれぞれの胸にある親子のの物語を、心に刻んでいってほしいと。


 私はお母さんからもらったこの命をもって、苦しみや悲しみのなかにある子どもが、この世の中から一人もいなくなるようにと、生き抜くことを約束します。
 もちろん、見果てぬ夢です。

 でも、この夢を追うことが、私に命を授けてくれたお母さんへの恩返しになると、いま、強く信じているのです。



愛する母へ
2011年 初秋  美樹より