「うん、分かったぁ。」


途端に間延びしたような話し方へと戻った。
どちらが素かは分からないが、少なくとも話しづらさはなくなる。


「じゃあ、とりあえず向かおうかぁ。魔王国。」


その提案を否定する理由はない。
ボクは頷いた。

しかしどうやって行くのか、と考えているとフェイがボクに手を差し出した。


「捕まってぇ。」


笑顔と供に向けられたお願いに、ボクは素直に従う。

その手を掴んだが、フェイの意図が分からない。
まさかこのままお手々繋いで歩く訳でもあるまいし。

うん、素直に聞こう。


「どうやって向かうの?」


するとフェイは一瞬きょとんとしたが、すぐに笑顔を浮かべた。


「もちろん飛んで行くんだよぉ。歩いて行ったら明日になっちゃう。」


飛ぶ?

ありふれた動詞の一つのはずだが、意味を理解するのには時間を要した。

まさか、フェイの翼で?
ボクも一緒に?
大丈夫なのか?

ボクの心配をよそに、フェイは翼を広げた。
その大きな翼を見て、ボクはふいに鳥の翼の大きさと筋肉についての知識が過ぎったが、それも一瞬だった。

フェイの翼が風を起こして羽ばたいたかと思うと、ボクはふわりとした浮遊感を感じた。

続けざまに二度羽ばたくのに比例し、ボクの足は地面から遠ざかる。

飛行機を抜かしたら飛ぶのは初めてだ。

更にボクの下に向けた目線は木を通り越し、森は足元になった。
改めて見渡すと緑がかなり広がっている。
フェイに会えなかったら迷い続けていたかもしれない。


「しばらくかかるから、ちゃんと手握っててねぇ。」


ボクは言葉に合わせ手を強く握ろうとしたが、ボクより先にフェイが強く握ってきた。

まるで逃がさないと言われているような気分だが、気にしない。
フェイはやっと見つけたと言っていたし、逃がしたくないという気持ちは理解出来る気がする。
嘘じゃないよ。

こうしてボクは新しいこの世界を空から眺めることが出来たのだった。