魔王様はボク



「ねえ、この後どうするの?」


こんな森で何をするんだろうか。


「この後ニャ?それは君が決めるニャ。ニャーはもう帰るニャ。」


え。
一瞬ポカンとしてしまう。


「一緒に行くんじゃないの?」


てっきりそう思ってたよ。
猫が暇つぶしの相手でも探してるのかと。


「行かないニャ。ここからは君の自由にするといいニャ。」


てことはこんな森に置き去りか。
保護されてた野生動物じゃないんだからさ。
これからは自由に生きろみたいな。
テレビにたまに出てるよね、こういうの。

猫は杖を掲げた。


「ニャーは君を送り届けるだけのつもりだったしニャ。…出来ればもう会わないといいニャア。」


酷いな。
ボク的にはもう少し君で遊びた、じゃなくて話したかったのに。
わざとらしい言い間違い。

まあ、連れて来てもらっただけよしとしよう。
仕方ないよね。


「分かったよ。とりあえずありがとう。」


猫はボクのお礼を聞くと、満足げに笑った。

聞かなきゃいけないことはあとないかな。
特にはないと思うけど気になることなら。


「そういえば君の名前って、「それじゃあニャ。」…。」


うん、やっぱり言いたくないみたいだ。
なら気になるけど、いいや。
諦める。


「そのペンダントはあげるニャ。ばいばい!」


猫は杖を振り下ろした。
猫の周りに円型の黒い光が立ち上り、その姿が見えなくなる。

やがて光が消えると、猫も消えていた。

あっさりとした別れだった。

静寂と小さな鳥の鳴き声だけが響く。

猫が居なくなると、そういえばと聞くべきだったことが頭を掠った。

猫の目的は結局分からない。
右目の視力に今のところの変化はないように思える。
色は確かめる方法がないので分からないけど。

猫は何者なのか。
名前を教えたくないのは分かったけど。
魔物とか魔族ってやつなのかな。
いやもしかしたら大穴で、かなり猫に似た顔の人間とか…。

うん、まあいいや。
猫が何なのかを知ったとこで、ボクが此処に来たという事実は変わらないし。
精々、豆レベルの知識が増えるだけだ。
大した得があるわけでもない。