「うん、準備完了ニャー。」
ボクはその図を改めて見回した。
二次元でしか見たことのないそれは、ボクの目にとても魅力的に映る。
「この真ん中に立ってニャ。」
ボクは言われた通りに円の中心に足を踏み入れた。
消してしまわないかと思ったが、どうやらいらぬ心配らしい。
真っ白の地面にうっすらと黒い光を放ちながら刻まれている。
グラウンドのいたずら書きやライン引きとは次元が違うようだ。
ボクが真ん中に立つと猫も近くへ寄ってきた。
そして杖を振り上げた。
応えるように魔法陣が光の柱を立てた。
線の部分から出ているため、囲まれているような錯覚を覚える。
「そーれニャ!!」
猫が杖を振り下ろした。
その瞬間。
「っ!」
目を開けられない程の光が広がった。
毎度お馴染みの黒い光だ。
何度か見た光だが、これが一番眩しい。
ボクは思わず目をつぶる。
瞼の裏からも光の存在が確認出来た。
ボクの目を潰す気かい。
出来るだけ沢山の物を見たいのに、いきなり目をつぶる羽目になるとは。
なんて心にもない恨み言を並べてみる。
しばらく、といってほんの数秒だが、目を閉じていると光が消えたのが分かった。
恐る恐る目を開けてみる。
眼下に広がったのは、先程までの真っ白い空間とは比べものにならないような光景だった。
1番に視界に飛び込んできたのは、緑。
正式名称、森。
ボクが今まで見たことのないような深い樹林だった。
木の種類は分からないけど、広葉樹林だ。
山とかでたまに見るやつ。
しかし明らかに日本ではないことが分かる。
「…わお。」
おや、思わず感嘆の声が漏れてしまった。
猫が出てきたときより驚いている故だ。
景色に負けた猫には悪いけど、こちらの方が凄い。


