そういえば名前で思い出した。
ボクはこの猫の名前を知らない。
この機会に聞いてみよう。
「ねえ、君の名前って「さあ、次ニャ。」…。」
なんか遮られた。
まるで自分の名前を言いたくないかのようだ。
まあ知られたくないのかもしれないし。
誰かが嫌がることはしたくない。
流れに任せよう。
「次は君の格好ニャ。まさかパジャマで来るとは思わなかったニャ…。」
確かに。
今自分でそう思った。
だって風呂上がりにパジャマ以外に着替えたら不審がられると思ったんだ。
なんて、その時の言い訳を考えてみる。
実際はそんなこと考えてなかった。
でもこの格好で連れていかれても困るのは本当だ。
自分でそうしたくせにね。
「このへんはサービスなんだからニャ。文句禁止でお願いするニャ。」
今のところ減らず口は叩いてるけど、文句は言ってないと思うんだけど。
猫はペンダントの時のように、どこからか一冊の本を取り出した。
何の本かは見えない。
「この本をパッと開いて、そこについてた服装にしてあげるニャ。」
適当だな。
やる気ない感じが滲み出てるようだ。
なんて文句は言わないよ。
猫は目をつぶり、ウニャーと唸りながらパラパラと本をめくっていく。
やがてあるページでめくるのをやめ、ニャ!と叫んで目を開けた。
「これだニャ!」
そう言うと、パッと猫の体が黒く光った。
当然猫を見ていたボクの視界も、黒く染まる。
しかしそれは一瞬で、すぐにもとの白い空間を確認出来た。
猫に何の変化もない。
予想外の出来事に何が起こったのか、イマイチ理解出来ない。
服装の話をしてたはず。
ということは…。
ボクは自分の体を見回した。


