魔王様はボク



「本当の本当に危険な世界ニャ。それでも本当に行くのかよく考えてから決断してほしいニャ。」


「行くに決まってる。」


またもや速答。

ボクの返答に猫は思わず頭を抱えた。


「君には考えるとか悩むということが出来ない虫でも引っ付いてるのかニャ!?考えないですぐ動くといいことないニャ!改善求むニャ!!」


何かの線が切れたように、猫は一気に言いたいことを言い尽くした。
言うだけ言ったあとは息切れしている。

改善って…。
そんなにボクの性格は悪いかね?

いやこれでも色々考えてるのだよ。
ただ、表に出さないだけさ!


「と、ともかく、ニャ…。決定、と、いうことで、いい、ニャね…。」


途切れ途切れにそう言った後、猫は大きく息を吸って息切れを治した。


「その世界では名前が統一でカタカナで、君達の名前とは違うニャ。」


例えるなら外国人だろうか。

やっぱり文字とかも違うんだろうな。

小学一年生のような勉強をすることになりそうだ。
この年になってやるなんて思わなかったよ。


「ということで君に新しい名前をあげるニャ。今の君の名前は?」


「…麗音。光恵(こうえ)麗音。」


珍しい苗字なのは自覚してるよ。
だからあんまり言いたくないんだ。
佐藤とか山田とかがよかったな。
あ、でも名前と合わないか。
今も合ってないけど。

猫はボクの名前を聞き、少し悩んだ後口を開いた。


「…じゃあ、君の名前はレオナルド・ウィンディーネとかどうニャ?これだと愛称はレオン、ニャ!かっこいいニャあ。」


猫は自分でつけた名前にうっとりしてるようにも見える表情を浮かべた。

それにしても、レオナルド・ウィンディーネね。
一気に名前が長くなったよ。
しかもレオナルドって男の名前じゃないだろうか。

多分愛称がメインでつけられたであろうその名前を頭の中で咀嚼する。

美味くはないかな。
もう少し塩が効いてた方が、じゃなくて。

ちゃんと覚えておかなくちゃいけないだろうな。

拒否権は多分ない。
猫に従うのが得策だ。