魔王様はボク



「おーい、それでいいのかニャ?」


「いいんじゃない?」


速答。

別にこれといって苦労しそうな支障が出る程の対価とは思えない。

失明なんてしたことないからこそ、思える言葉だとは自覚している。

しかし、これが本当に思ったことなのは確かだ。


「…君軽いニャー…。今からそれだと今後苦労するニャ?」


遂に同情された…。

だって本音なんだもん!!
と可愛い子ぶってみる。
心の中でだけど。


「悩む必要もないかなと思って。いよいよ別の世界に行ける訳だし。」


ずっと行ってみたかった。
待ち望んでいた。
早く行きたいに決まってる。
…明日模試だったし。

どちらかと言うと後者が本命。

こんなこと言ってなしにされてはたまらないので、口を厳重にチャックした。
拷問にも耐えられる強固さだよ。
嘘だけど。


「と、とにかくニャ。今から君を連れて行く世界は所謂異世界ニャ。」


うん、それはそうだろうね。

他の言い方にしただけじゃないかい?


「君がいた世界とは違う世界は沢山あるのニャ。その中の一つに君を連れていくニャ。」


そんな話を聞きながら、もしかしたらこの猫は予想以上に凄い存在なのかもしれない、なんて思った。

今この猫は断定した。
違う世界は沢山ある、と。

ということは、いくつかの世界に猫は行ったことがあるということだ。

そうでなければ断定するということは難しい。
余程自信を持って言っているわけだから。

少なくとも、世界を行き来する力を持った猫というわけで。

本当にいざというときは、ボクなんか簡単に捻り潰せるんだろうな。
そう考えると…。

ああ、足痺れた。

ボクは足を少し崩す。

しまった、KY行動してる。
さっきまでの思考と随分違う。

そう考えると…、なんだっけ?

ほら忘れた…。
考え事は一度に一つにしなさい!
はーい。