「早過ぎるニャ…。」


呆れが混じりに混じった聞き覚えのある声。

ボクが振り返ると、やはりそこにはあの猫がいた。

なんだかこの猫に呆れ顔しかさせてないような気がする。
まあ仕方ないさ。
これがボクなんだよ。

真っ白な空間故か、猫の黒さが異質だ。
見様によってはシミのように見えるかもしれない。

あ。
シミといえば、この前制服のブラウスについたみたらしのシミがほったらかしだった。
ボクはもう使わないけど、もし凜音が使うことになったら申し訳ないな。
シミ抜きしてくるべきだった。
なんて、したことないから出来ないけどね。
家庭科は得意ではないのだ。

閑話休題。

この集中力のなさはボクの短所なんだろうか。
いや見方を変えれば、一度に色んなことが出来るということかな。

とめどなく思考を巡らせていると猫がじとりとした目でボクを見た。


「説明してからちょっとしか経ってないのにもう来たのかニャ?それじゃ、ニャーの立てたプランが台なしニャ…。」


プラン?
何だそれは。

ボクの不審顔に気づいたのか、やっとボクが猫の話に反応を示したからか、猫は自分のプランというものについて話しはじめた。


「普通の人なら明日の夜まで考えるものニャ。その間に君を送るための準備をしようと思っていたのニャ。明日まで時間があると思ってたのにニャ…。君は普通の人じゃないニャ。」


そんなことないよ。
わりと普通の人さ!!


「普通の人じゃ、な!い!ニャ!」


強調されてしまったよ。
二重強調だよ。
反論のしようがないじゃないか。


「パジャマで来てるし、」


あはっ!


「何にも持ってないし、」


えへっ!


「本当に行く気あるのかニャ?」


うふっ!


「てか聞いてんのかニャ!?」


く…、ここまでか。
ガクッ…。

なんて遊ぶのもこの辺にしておこう。
猫が涙目になってきた。