真っ暗だ。
もしかして死んだのかな。

そう思うってことは、生きてるってことなんだけど。

真っ暗なのはただ単に目をつぶっているから。

どうやらボクは横向きに寝てるらしい。
右頬が何か固い地面のような感触に当たっている。

このままもう一眠り決め込みたいけどそうもいかない。
いったい自分はどうなったのかくらい知りたいし。

ボクはゆっくり目を開けた。

始めに目に入ったのは、白。
というか白しかなかった。

何もなく、ただ白いだけの場所。
部屋じゃない。
なぜなら、果てが見えないから。

なんでボクはこんなところにいるんだろう。

…ああ、そういえば飛び降りたんだっけ。

とりあえず起き上がろう。
寝てても仕方ない。

床に手をついて体を起こす。

立ち上がって周りを見渡してみた。

うん、白。
白しかない。

自分が白くなっていないかちょっと心配になったけど、そんなことはないようだ。

飛び降りたときと同じ格好をしている。
色ももちろん同じ。

そこに安心したところで、改めてこの空間の状況を冷静に分析してみよう。

寒くもなく、暑くもない空間。

しゃがんで再び地面に触れてみる。

触っているとはっきり言えないような感触。
こちらも温度を感じない。
温かくも冷たくもない。

なんとも不思議な場所だ。
今まで経験したことがないような場所。

顔がにやける。

楽しい。

ここに来れただけでも、飛び降りしたかいがあったというものだ。

新しい発見。
そんなものが心をくすぐる。

探検は昔から好きだった。

…あれ昔っていつ?
記憶を無くす前?

うーん、分からない。

まあいいか。

そんな風にボクが考えていると、背中に何かの気配を感じた。