蝉の声。
川のせせらぎ。
強い日差し。
「いらっしゃいませー」
「ちょっと香川さん?あなた、もうちょっと明るく!」
高校生最後の夏休み。
アタシは近所のファミレスでバイトをさせてもらうことになった。
正直、お金が欲しかった。
欲しいものがありすぎて。
閉店時間が来て、
アタシは店の片付けと掃除をしていた。
「香川さん…だよね?」
振り向くと男が立っていた。
見たことあるようなないような…
「俺!隣のクラスの横山!」
あー、とアタシは思い出したふりをした。名前言われたって興味がないものはどうでもいい。
すると横山はしかめっ面で
「本当は俺のこと知らないでしょー、分かりやすいなあ」
え、バレてたか。
「…まあね。ごめん知らなかった。」
あっさり言うと彼は
「いいよ。俺香川さんみたいなの…いいなって思うよ」
アタシは困って(…というか慣れてはいるが)適当に流すと
「本当だよ。俺、香川さんのことずっと見てたんだから!」
アタシは不覚にもドキッとした。
だってあまりにも彼が
ピュアだったから。