『もぉ話しかけないで!』
さきのその言葉が胸に響いた。
目に大粒の涙をためて
怖がっているよぉな…寂しがっているよぉな目。
…誰か助けてってゆぅ目をしてる…
俺は、さきに何ができる?
さきは何を怖がってる?
何でそんな…
苦しい目をしてるんだ──?

さきが走っていくのを、
俺は無意識においかけた。
でもさきを見失ってしまった…
「くそっ…!」
さきが行きそうなところ…
「…屋上だ!」
息切れしてるのにも気づかないくらい
俺は走った。
早く…早くさきを見つけてあげないと…!

バンッ

「ハァハァ…さきっ!!」
目の前には大粒の涙を流すさき。
俺は、そんなさきさえも愛おしかった。
体が勝手にさきを抱きしめてた。
『ヒック…ヒック…』
「さき…。何で俺をさけるんだよ?
俺は絶対さきを嫌ったりしない。だからさ…
全部俺に言ってよ?俺を頼ってくれよ…な?」
『…あ…たしっ……』

この時の俺は
さきの涙の理由を理解した。
これまでどれだけ1人で我慢したか…
1人で全部を背負いこんで
誰も信じてくれない世界で頑張ってきてた…
そんなさきを、ずっと守りたいって思う。
さき。もぉ1人で頑張らなくていぃんだよ──。