(どうしたんだい?お嬢ちゃん、怖い顔をして)


「え?」


学校の裏庭。今日、猫惨殺投げ込み事件のあった場所だ。
拭きとられて薄くなった赤い地面を見据えていた亜弥に、一匹のすらりとした黒猫が声を掛ける。
毛並みの綺麗な黒猫だ。
血統書とか付いててもおかしくないほど綺麗な猫。



「あ、えっと…」
(アンタだね、あーやって子は…本当に私の話が通じてるようだね)
「あ、はい」



ホントはあーやじゃなくて亜弥なんだけどな。


なんかすごい貫禄のある黒猫さん…。



(こんな所でなにしてるんだい?)
「あっ…ごめんなさい!!」



亜弥は黒猫に向かって頭を下げた。



(何の話だい?アンタは何か悪い事でもしたのかい?)
「いえ、私の学校に猫さんの死体が投げ込まれて…それがここの学校の生徒の仕業で…」



だから…ごめんなさい。
誤って済む問題じゃないけど……。



(ゴロちゃんの件だね。私も話は聞いてるよ。でも、それはアンタの所為じゃない。アンタが気にすることじゃないよ)
「でも!酷いよ…こんな……」


死んでしまった猫はゴロちゃんと言うらしい。
黒猫は亜弥に擦り寄ってきた。


(優しい子だね…)


この黒猫さんはゴロちゃんと仲が良かったのかもしれない。
ゴロちゃんと名前を呼ぶ時、声色が優しい気がする。



そう思うと、目頭が熱くなってきた。


「犯人に絶対謝らせるから…約束!」