ぼんやりとした夢見心地の意識の中で音が聞こえた。勢いよくカーテンを開ける音。
 
 
太陽と言う名の眩しい光に照らされた俺は、反射的に勢いよく布団を跳ね退け起き上がる。まだ寝ぼけているせいで虚ろな瞳で窓から見える景色を眺めていると、既に日が高くまで昇っていることに気が付いた。
 
 
 
なるほど、つまりいつものごとく起床時間を過ぎても目覚める気配のない俺を起こしに来たってわけか。
なんて――まだ正常に機能しない脳内で考え、一人納得しているとコツコツという足音が聞こえて、俺が居座るダブルベッドの側まで誰かが近付いてきた。
 
 
 
「お早うございます、霜緋(ソウヒ)様」
 
 
 
そう言って丁寧にお辞儀をしたのは、白いブラウスに黒色のコルセットと同色のプリーツスカートを纏い、その上から純白のエプロンを着用した女性だった。
茶色のボブカットの髪に同じ色の瞳を持った可憐な容姿の彼女には、メイド服とか言うその服がよく似合う。
 
 
 
いわずもがな、光を遮断していた筈のカーテンを開け、薄暗い部屋を明るい光で満たしたのは彼女の仕業である。
俺はまだ重たい瞼を擦り、先程の彼女の諸行を不服に思いながらも、『朝の挨拶』に答えた。
 
 
 
「……ああ、おはよ、ロゼ。いつもながら、"優しく"起こしてくれてありがとう。いや、マジで」
 
 
「あら、嫌ですわ!まるで私が優しくないみたいな言い方をなさるなんて……。こうでもしなければ、貴方様はお目覚めにならないでしょう?」
 
 
「……仕方ないだろ。任務が長引いて朝方まで掛かっちまったんだから。人使いの荒い上司のせいでいたいけな部下は涙目だぜ」
 
 
 
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