やあやあ。はじめましてだ、諸君。いやさ読者の皆さま。いやさ暇人の皆さま。


 唐突だが暇人の諸君は……訂正、読者の諸君は、青春してる?


 あの夕日を目指し走り続ける青春。


 思春期の衝動を抑え、勉学に明け暮れる青春。


 はたまた、社会の荒波に揉まれながらも、自らの役割を見据えてこなしていく青春。


 十人十色。ひとには、さまざまな形の蒼い春があると思うんだ。


 そして貴様らが……訂正、読者らが"青春"の二文字を聞いて、なにより先に思い浮かべるのは――


 "恋愛"


 ――の二文字ではないだろうか。


 恋文に書いた待ち合わせの桜の木の下で、打ち明けられる愛。ただのクラスメートが、学生生活の共同体となり生まれる恋。


 教師の目を盗み、放課後の教室に鍵をかけ、初めて交わすふたりの性春……おっとそこまでだ。


 規律を守らない不良に口うるさく当たる委員長。ある雨の日、不良がダンボールの子犬に傘を掲げているのを見て生まれた委員長の恋。


 教師の目を盗み、放課後の教室に鍵をかけ、あられもない姿でドッグフードを与えるふたりと一匹の性春……おっとそこまでだ。


 恋愛だって同じ。これもまた十人十色だ。


 さまざまな形がある。クラスメートのロマンスがあるなら、子犬と委員長のロマンスもあっていいじゃないか。


 そう、これから俺が暇人のみんなたちに聞かせる……訂正、読者のみんなたちに聞かせるお話だって、そんなありふれた青春のありふれたロマンスに過ぎないんだ。


 ありふれているけど、ちょっとだけ変わった二人がちょっとだけ変わった環境で出会い、ちょっとだけ変わった恋をする物語。


 では。看板まで、ごゆるりと。