大好きな君へ

女は俺の言葉を健気に待っている。

引き止めれば、俺が戻ってくるとでも信じているのか。

別れ話自体を嘘だと思っているのか。

どっちにしろ結果は変わらないが。

女と視線を合わせてみたところでさして心が動じるわけでもない。

反対に彼女と言葉を交わしたくないとさえ思ったくらいだ。

正直に言って、投げやりになりつつある。

そんな俺の発した不穏な空気を感じ取ったのか。

隣に立っている友人が珍しく口を挟んできた。


「俊哉、早くしろよ」


すると、黙っていろとでも言いわんばかりに、女は俺の友人を睨みつけた。

今までその存在を無視して、視界にも入れていなかったくせに。

奴がそんなものに動じることなどあるはずがないとわかっていた。

逆に相手を鼻で笑い飛ばすくらいのことを平然とやるような人間だ。


都合がいいので取りあえず謝罪はしておくが。


「悪いな、すぐ済むから」