大雅は暫くの間、置いていかれた携帯を見ていた。
「今、携帯忘れてくなよって言ったばっかだよな？」
とりあえず同意を求める。
「だな」
返ってきたのは笑いを堪える大翔の声だけ。
「ﾊｧｰ」
大雅はため息が自然に出たことに驚いた。
「届けてくるわ」
よっこらせ。
そんな効果音がつきそうなほどのっそりと立ち上がった大雅は亜美の携帯を持って部屋から出た。
「大翔。お前、相手が誰だか知ってんだろ？」
陽の感情の起伏のない声。
「まぁね」
緊張感のない大翔の声。
「まぁ、大体だから間違ってるかもしんないけどねー」
相手が真剣であればあるほど大翔の声は緊張から程遠くなる。
