「ずっと、お前を振り向かせるためだけに、あいつは頑張ってた」


「……そっか」


「あいつ……、いや、俺は何も言わねぇわ」


大雅は黙ってしまった。


それにつられてあたしも黙る。





「颯太……」




突然横にいた優真君が小さな声で呟いた。


あたしはその声を追うように、顔をあげた。







そこにいたのは、かわらない笑顔であたしを優しく見ている颯太。


「颯太―……」


「亜美、久しぶり」


少しだけ身長伸びたのかな?


気のせいか。


「見て。俺少しでもスーツ似合うようになったかな?」


スーツを掴んで嬉しそうに聞いてくる颯太。


あたしはそれに何度も頷いた。


本気で似合ってるって思ったから。


「まだ弁護士の資格は取れてないけど、いつかちゃんととるよ」


「颯太なら、取れるよ」


きっと。絶対に。


「俺、亜美の隣にいても違和感ないくらいちゃんと大人になれてる?」


「うん」


「そっか、ならよかった……」


安心したように息を吐いた颯太は一歩あたしたちに近づいた。


「まだ弁護士にはなれてないけど……」