早足で向かうことになるなんて、起きたときは思いもしなかった。
「見えた……」
少し息切れしながらも公園が見えてきたからには、ペースをあげざるをえない。
早足から小走りにして、公園のベンチに座っている武に声をかける。
「たけるー!」
「遅い」
腕時計を見れば、約束の時間から3分しか過ぎていない。
「細かい男はモテないよ」
「うるさい。アホ面」
そんなこと知ってます。
悔しいけどね。
武は開き直っているあたしを無視して、立ち上がった。
「で、見せたいものって?」
武があたしを無理矢理この公園に呼んだのは、見せたいものがあったからのはずだ。
「それば……」
そういって、武は自分の腕時計に目を移す。
「もう少しだな」
意味のわからないつぶやきが聞こえてきた。
「は?」
「気にすんな。それより、お前に言ってないことがあるんだ」
「嫌な予感」
武が改まっている。
嫌な予感しかしないんだが。
「実は亜美がいなかった五年間、あいつらと……、正確には斎藤だけだが、連絡をとってたんだ」
衝撃的な事実。



