彼はきっととてもあたしを大事にしてくれているんだ。


「そんな先のことまだ考えなくてもいいよ。ただ―…」


「ただ?」


いつのまにか髪は綺麗にカールしている。


「佐伯さんは多分いつまでもあたしの髪型担当だよ」


「確かに……。それは誰にも譲れませんね」


そういって笑ったのだった。







そのあと、時計を見れば、そろそろ出発しなければならない時間になっていた。


服はいつものTシャツに赤のチェックのジーパン。


目立たないことを第一に考えた。


それを察してくれたのか、佐伯さんが作った髪型も普通に巻いただけのシンプルなものだった。


「いってきます」


「いってらっしゃいませ」


佐伯さんの声を背中で聞いたあたしは、さっきもらったポーチが入ったカバンを肩からかけ、武と約束した公園にむかった。



時間まではあと10分。



多分間に合いません。


なんか武との約束ってものをちゃんと守れた記憶が少ないなぁ。


いつもギリギリか、遅刻しちゃうからなぁ。


本当にいつも迷惑を掛けてます。


それなのに見捨てないでいてくれてありがとう。