いきなり言われた言葉に亜美は首をかしげた。
「出発前に私が言ったことです」
「覚えてません!」
覚えている、いないの問題ではなく、どれのことかわからない。
「だと思いました」
期待されてませんでした。
「私はいつでも亜美さんの見方だ、ということです」
あぁー、それか。
なんか言われたような気がする。
嬉しかった気がする。
「その言葉、想い。すべてあの頃から変わっていません。亜美さんを守るのはいつまでも私です」
なんか佐伯さんに似合わない、甘い言葉だなあ。
「昔は、亜美さんの近くにいるのはずっと自分だと思ってました」
まぁ多分そうだけど。
「でも違うんです。亜美さんでも成長するんです」
「亜美さん“でも”って何?」
あたし、成長しないと思われてたの?
「亜美さんがいない、深瀬家はとてもさみしいです」
それを聞いたら瑠伊とお父さんが悲しむだろうなぁ。
「亜美さん。亜美さんが結婚されても、私はその相手の方を守ろうと思えるでしょうか?」
なかなか聞けない、佐伯さんの弱音。
彼も、普通の人間だったんだ。



