春は思い出したのか、笑っている。幸せそうに。
「気にしないでくださいって言っても申し訳なそうに謝るから、気にすんなって言ったんだよ、いつもみたいに」
いつもの雑な感じでいったのか!
「緊張してるのかと思ってさー。ダメかなとは思ったけど、こっちが申し訳なくなってきてさ」
確かに、いつまでも申し訳なそうにしてたら、こっちもそうなるな……。
「そしたらめちゃくちゃ驚いてた。まぁ、そんな顔もかわいいけど」
ちょいちょい惚気入れてくるのやめようか。
「その時はその顔がおもしろくて笑ったんだ」
「「「最低」」」
再び声が重なる。
「揃ったねー。でもなぜか花歩も笑ったんだよ。その時」
なぜだ。
まだ見ぬ花歩ちゃんのイメージが定まらない。
「それからしばらく話して、アドレス教えてあげた。ってか名刺あげた」
名刺ねー。
「何日かたって、電話あって、この間のお礼をしたいのですが、って言われたから、断ったんだけどねー。気が付いたら一緒に食事してた」
はい雑ー。
雑で、めんどくさがりの春を動かした何かにはとても興味がある。



