「でもこれがまた可愛いんだよ」


そう言って嬉しそうに春が笑う。


あぁ、幸せなんだね。


「いつ式挙げるの?」


「分かんない。相手高校生だし、卒業まで待つかも。虫除けに籍だけいるるかも」


なんか雑だ。


結婚しちゃいますって言ったわりに、式は未定。


籍だけいれるのか。


「普通の人?」


「いや、どこぞのお嬢様」


やっぱり雑だ。


「出会いは?」


アメリカのことなんか忘れて、春の話で盛り上がる。


「俺のホテルで花歩の家の……あ、花歩って言うんだけど。まぁパーティーがあって、父親が忙しくて、おいてけぼりくらってるとこに声かけた」


あの春が自分から声をかけたという事実に驚いた。意外すぎる。


「初めはもちろん営業だったんだけど、俺が渡した水を焦って着てた服にこぼしたから、裏に連れていったんだよ」


なんとベタ。


「そしたら花歩のやつ、真っ赤な顔しながら謝ってくるんだ。迷惑かけてすいませんって」


こっちは客商売だしなんとも思わないのにね。


謝るだけまだいい方だと思う。


やってもらって当たり前と思ってる奴なんかより全然いい。