さすがにドレスで電車に乗るわけにもいかず、武の家には佐伯さんが送ってくれた。
5年前と変わらず、まわりに人がいるときは他人行儀に、礼儀正しく挨拶を交わした。
まだ春も早紀も来ていないみたいなのに、佐伯さんと武の執事が出ていった後、砕けた雰囲気がすでに出てきた。
「久しぶり……」
「最後に会ったのいつだった?」
「結局最後は一年くらい前かな?」
「もうそんなにたつのか」
おじさんくさい言葉についつい笑いが漏れた。
「春とは?」
「春は武より会ってないよ。二年くらいかな?」
「早紀は……聞くまでもないか」
「うん」
春は短期留学でアメリカに来ていたが、二年で帰りやがった。
つまり、春が帰った、一年前以来、会ってはいない。
もちろん早紀はアメリカに来てはいない。
まぁ、華道の修業に忙しいし、早紀自身、外国が苦手だから仕方ない。
そんなことを言っていたら、2人がそろってあらわれた。
久しぶりに見る二人はとても大人びていた。
ただ、しばらくは他人行儀のまま、挨拶を交わさなければならないだろう。
嘘臭い笑顔が4人。



