あたしの言葉を聞いて陽は、にやりでもなく、苦笑いでもなく、本当に嬉しそうに笑った。






「でも、あたしの気持ちは、陽に迷惑を掛けちゃう」


大事なのはあたしの気持ちじゃない。


どうしたいかでもない。






あたしたちを隔てる壁だ。



その乗り越え方だ。





でも陽にはその壁はあまり高い物ではなかったようだ。








「俺がお前に釣り合うようになればいいんじゃね?」




簡単に言っちゃうね。







「本当は“釣り合う”とか“釣り合わない”とかは嫌いだけど、お前のために一肌脱いでやる。お前は安心してアメリカ行ってこい。その間に俺は変わっとくから」


別に変わってほしいわけじゃない。


陽に無理をさせてしまってでも叶えなきゃいけない気持ちなのだろうか。


あたしは自分に問い掛けてみた。



まぁ結果ははじめから分かってたけど。








「期待して行ってくるね」






陽を信じない選択肢なんか無かったし、気持ちを信じない選択肢もなかった。





よく考えてみれば陽に逆らえたことなんかなかった。
いい意味で。