一瞬ただの連絡事項かと思った。
ついでにいえば、スルーしかけた…………ってかした。
「この前の100円は返したじゃん!」
「……ハァ、」
陽があきれた。
「なんていうか、最後までやらかしてくれるよな」
頼む。
主語を入れて会話をしていただきたい。
「今に始まったことじゃないよね」
「まぁね」
納得されるのもなんとなく嫌なもんだ。
「現実逃避も大概にしとけよ。俺の言葉、聞いてなかった?」
ちょっとにらまれた後、陽はにやりと笑った。
そんな表情は始めてみたかもしれない。
「……いやいや、結構です」
「分かってんじゃん」
そして満足そうに笑った。
分かってやがったな。
この顔は。
「……」
「……」
どうしたらいいのかわからなくて黙り込んでしまった。
これは世に言う両想いなわけだが、あたしたちにはいろんな壁がある。
それは簡単に越えられるものではない。
大きく、頑丈な、あたしたちを決定的に隔てる壁。



