「じゃ俺も帰ろうかな……」
大翔はいつだって気の抜けた声だよね。
「俺からお前に残すような言葉は特にねぇや。ただ……」
「ただ?」
少し考えるようにして、大翔は眉間にしわをよせた。
「俺、お前のこと、結構好きだったよ」
その“好き”が恋愛感情ではないことをあたしは知っている。
そして、その“好き”が大翔の最上級の誉め言葉だと言うことも知っている。
「うん、あたしも」
あたしさっきから“うん”を連呼してるね。
でも、なんとなく他の言葉だったら詰まりそうで。
「俺、兄貴支えられるようになるから」
大翔の口からでた“兄貴”という単語。
「ちゃんと呼べるようになったんだね」
そういうと少し照れ臭そうに笑った。
「ま、そういうことで、またな!」
「うん、またね」
ポケットに手を突っ込んで大翔は歩いていってしまった。



