知ったような気になっていただけで、あたしは何も知らなかった。
「はじめは嫌われてた颯太があたしに懐いてくれるようになって、すっごい嬉しかった」
友達がもともと少なかったあたしには、こんなふうに懐いてくれるような人はいなかった。
「お嬢様、深瀬……あたしの肩書きに怯える人ばっかの、そんな生活にイライラしてた」
どうせあたしなんか……ってひくつになってた時期だった。
「仲良くなっていけばいくほど怖かった。離れなきゃいけない時が来るのが」
こうなるのが分かってたからこそ、仲良くなるのが怖かった。
「みんなとの思い出が増えれば増えるほど嬉しいのに悲しいの」
あたしが壊れていく未来が見えるの。
「多分みんなは分かってないよ。あたしにとってあんたたちがどれだけ大切な存在か」
「亜美……」
颯太の声は不思議だ。
泣きそうになる。
「だったら何でアメリカなんか行くんだよ!やめちゃえよ」
「颯太」
颯太の言葉を大翔が制止した。
「ごめん、颯太。アメリカに行くのはちゃんとあたしの意志で決めたことなの」
「亜美……」



