「あたしは嘘を平気でつける自信があるよ。でも今日は絶対に嘘はつかない。全部事実だから」
あたしは無意識に営業スマイルを作れるし、平気で嘘もつけるような、大人のなりそこないみたいだけど、今日は絶対に嘘はつかない。
ってか、つけない。
「あの日……あたしが秀にフラれて、秀があたしに近付いた理由知っても、それでもなかなか嫌いになれなかったあの日に全部始まったの」
あたしと、陽たちの物語はココからなの。
「あの日、大翔にぶつかって、シュークリーム落として、陽たちのとこに連れてこられて……。ただの失恋少女と愉快なヤンキーたたが出会った、で終わるはずだったの」
終わるべきだったともいうかもしれない。
「でもそれだけじゃ終わらなかった」
終わらなかったうえに、何かが始まってしまった。
「陽たちといろんなこと経験した。夏があんなに暑いものだったことも、花火があんなに綺麗なのも、知れたのはみんなのおかげだった」
あたしはただ知ったような気になっていただけで、本当は何も知らない、ただの世間知らずのお嬢様のまま育っていくところだった。間違いを正したのは陽達。



