失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿




音楽室のドアの前に立って中の音な耳を澄ませてみた。


中からは何の音も聞こえない。


それがよけい亜美を緊張させる。


いつもはノックなんかしないのに、今日はなんとなくノックしたくなった。


トントン


「誰だ」


久しぶりに聞く陽の声。


ドキ


心臓が大ききなる。


それは緊張からか、それとも――――



亜美は勢い良くドアを開けた。



みんなの顔がよく見える。





「亜美っ!!」



颯太が亜美に飛び付くように抱き付いてきた。


「颯太……」


久しぶりの感覚に、思わず頬がゆるむ。


「――何しに来た」


陽ね冷たく、鋭い声が聞こえた。


思わず体が強ばる。


颯太が心配そうに亜美を見つめた。


それに亜美はなんとか笑顔で答え、陽に向き直った。


「……今日は、話を聞いてもらうためにきたの。あたしの最初で最後の本音を」


陽は依然厳しい顔をしたまま。


「大翔か……」


「悪いな。俺、あいつに恩ある身だからさ」


陽はなぜ今日、集められたのかやっと分かったみたいだ。


多分勘違いしてると思うが……。