母のお墓には電車で行く。
佐伯さんが送ってくれると言ってくれたが、今は普通の人でいられる最後の日だからと断った。
電車に揺られ、駅から5分ほどタクシーに乗った。
運転手にお金を払って、亜美は車を降りた。
――久しぶりにきた
見上げればたくさんのお墓。
ここは都会の喧騒からは少し遠い。都会なのに、田舎。そんな言葉が似合う。
亜美は事務所でお花と線香とロウソクを買い、お墓に向かった。
昇る階段の数はもう感覚で覚えている。
それくらい通った母のお墓。
しかし仕事が忙しくなってからは半年に一度ほどしか来ていない。
見晴らしのいい丘にそれはある。
「――お母さん、久しぶり」
そう挨拶をし、亜美は大きなお墓を凍えそうな水を使い掃除し、雑草を抜き、線香をあげた。
そして亜美はお墓の前に座り込んだ。
たくさん話したいこと、話さなければならないことがあるんだ。
「お母さん、あたし聞いたよ。あたしを守って死んじゃったんだね……?」
返事はもちろん返ってこない。
望んでいるわけでも無いのだが。



