失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿




玄関にはもう1つインターホンがある。


亜美はそれを鳴らし、ドアから少し離れた。


すると今度は何の返答もなく、代わりに使用人ではなくいきなり武本人が出てきた。


「……ビックリしたぁ、いきなり出てこないでよ。もし不審者だったらどうすんの」


「これで見えてる」


そう言って、武は玄関の上を指差した。



「……あぁ、監視カメラね。そりゃ見えるか」


「寒いからさっさと入れ」


そう言うと、武は1人でずんずん先に進んでいってしまった。


「……ちょっと待ってよ!」


幼なじみといえど、他人の家。


騒ぐわけにも行かず、小さな声で武を呼ぶことしかできなかった。


早足で進んでいく武に、亜美は小走りで追い掛ける。


たまに廊下にいた使用人さんが亜美たちに頭を下げていく。


その一つ一つに丁寧に亜美も頭を下げ返す。


「そんなこと後にしとけ。昼、食うぞ」


「そういえば」


また昼ご飯食べてないんだった。


「俺はすごく腹が減った」


「それは大変申し訳ない」


「わかってんならさっさと歩け」


亜美は無言で武を追い掛けるしかなかった。