失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿




いやな予感しかしなかった。


でもそんな予感とは裏腹に、佐伯さんが使った道は案外普通の田舎道。


「これのどこが裏道なの?」


そう聞くと、また佐伯さんはニヤリと笑った。


「ここは多少速度を客観的に守っていなくてもバレません」


どういうことですか?


客観的にって……


「つまりは、警察の方がここには立たないんです」


たまに見かける警察官。


スピード違反の車を取り締まっているあの警察官。


あれがいないだと?


「なんで?」


「詳しいことは分かりません……」


佐伯さんにもしらないことってあるんですね。


亜美はまずそこが意外だった。


何でも知ってるイメージがあったから。


「間もなく着きます」


速い。


何故だかとても気になるけど、なんとなく怖くて聞けない。


まぁ、何にせよ速く、しかも時間通りに着いたのだからかなりよかった。


これで武にも怒られなくていい。


武の家は玄関までがすごく遠い。


だから門でインターホンを鳴らし、門を開けてもらい、そこから車で玄関近くまで行く。


「……んじゃ、いってくる」


「はい」