“和”を愛し、異国の文化をあまり好意的に捉えられない早紀。
そんな彼女はきっと自分から亜美に会いに行くことはないだろう。
「行ってらっしゃい」
「うん、いってきます」
「帰ってきたくなっても、帰ってこないでよ」
「冷たくない?」
「こんなギリギリになるまで挨拶に来ないやつに使う優しさは無い」
「さっき春にも似たようなこと言われた」
クスッ
早紀が笑った。
亜美はしばらく会えなくなる目の前の友達を見つめ、彼女のすべてを目に焼き付けた。
「アメリカ行って、大人になって帰ってきなさい」
「そうだね」
早紀は最後にお守りをくれた。
「これは?」
「お守り」
「それは見れば分かるよ」
「そのまんまだよ。私の好きな香りを染み込ませておいたから」
亜美は手に持ったお守りを鼻に近付けてみた。
「あー、」
そこからはいつも早紀から香る香りがした。
「何かあったらすぐにその匂いを嗅ぎなさい。気休めくらいにはなるでしょ」
気休めなんてもんじゃない。
休息になるよ。
それくらいこれの力は大きい。



