通されたのはもちろん和室。
亜美はきちんと礼儀正しく、マナーにそって座布団の上に座った。
それからしばらくしてから和服姿の早紀が現われた。
「お待たせしました」
「お気になさらずに」
亜美の前に座った早紀からは、お花のなんともいえない匂いがした。
「お花してたの?」
「あぁ、匂いした?」
「うん」
早紀は自分の袖の匂いを嗅いで、首を傾げた。
「アメリカに行くんだってね」
「うん」
カコンカコンと音が聞こえる。
「明後日だって?」
「うん」
「いつまでのつもりなの?」
亜美はしばらく考えた後、
「一応大学卒業する年までって考えてる」
亜美の選択は、大人になるまで帰ってこない、だった。
しっかり、大人になって、自分に自信が持てるようになったら、帰ってくる。
そして、父さんの跡を継いで会社を経営するつもりだ。
「しばらく会えなくなるね」
「まあ、仕事で日本帰ってきたりもあるだろうから」
心配しないでほしい。
「早紀が呼んだら来るし」
早紀はあたしの大事な友達で、家族みたいなものだから。



