「俺もその内行くし」
彼もまた、経営者だ。
「俺んとこ、そのうちアメリカにもホテル出すんだと」
春の家はそこまで手を広げるつもりだったのか。初めて知った。
「早紀は興味なさそうだけどね」
「早紀はめちゃくちゃ日本文化の家系だからね」
華道だもんね、早紀は。
「……あいつらはいいのか?」
あいつら。
「あいつらは……、まだ決着付いてないから、武に会って、母さんにも報告して、その後」
「そっか……。まぁ、行ってらっしゃい」
「行ってきます」
「俺、休憩時間ねぇからこれで」
「うん、ありがとう」
そっけない別れの言葉は、外国という距離が壁にならないから。
お金持ちの春はアメリカなんて行きたい時に行けるのだから。
お互いにそっけない別れの言葉を延べ、別れた。
次は早紀だ。
今日は家にいるらしい。
亜美は、ホテルから出て、入り口の近くに停まっていた車に乗り込んだ。
「お疲れ様でした」
「次は早紀の家にお願いします」
「はい」
急がなきゃ、武の家に行くのが遅れちゃう。



