まずは春の家。


大翔の時みたいにアポなしの突撃、なんて失礼な真似はしない。


もちろん事前に行く事は伝えてある。


いつもよりラフな格好の亜美と、いつもきっちりした佐伯さんを引き連れ、亜美は家を後にした。







ピンポーン


春がいるのは、駅の近くにある最近出来た超高級ホテルだ。


そこで春は将来、立派なホテル経営者になるために仕事を手伝い経験を積んでいる。


今日はその短い休憩時間に会う約束をした。


佐伯さんにホテルの前で車から下ろしてもらった。


自分から行かなければ意味がないのだ。



ロビーに一歩踏み入れれば温かい空気が身体を包む。


――もう冬なんだ


すごく小さなことにもあたしは季節を感じる。


昔は季節なんかどうでもよくて、寒いから、暑いから、なんとなく季節を過ぎてきた。


今年は何か違う。


ヤンキーたちといるときは全てが“濃く”頭に残る。


まるで今までの季節が色褪せていくように。


ロビーのカウンターで春を呼んでもらう。


「深瀬様ですね。聞いております」


笑顔のお姉さんが案内してくれました。かわいいです。