「それだけじゃないだろ」
「ひゃー、大翔には適わないね」
人にふざけないでといいながらも、一番ふざけてんのは亜美だ。
「黙って行くつもりだったの。みんなには」
これか。
これが、陽がイライラしてる原因。
「しんみりした空気にしたくなかったってのもあるし、あたしは、あんたたちに会ったときから、その覚悟はしてた」
どんな覚悟だよ。
「俺たちを裏切る覚悟か?」
「違うよ!」
「違わねぇ。お前、陽に何て言われた?」
俺の普段ねおチャラけた雰囲気の排除した声で言えば、亜美は反応に困った顔をした。
「……ここに、音楽室にくるな、って」
「お前、何でそれ言われたのか理由分かってねぇだろ」
この馬鹿が。お前が馬鹿なのは知ってる。
でも今はその馬鹿を発揮する時じゃない。
何で、何で、陽の気持ちを分かってくれないんだよ。
「陽はお前に、裏切られたって思ってんだよ」
亜美の話を少し聞いて思った。
あいつは、ショックだったんだ。
裏切られたような気がして。
何の相談もなしに、自分の前から消えようとした亜美に怒ってる。



