出された紅茶からはいい香りが漂っている。
食器だって、そんなことに疎い大翔でさえしっついるようなブランドだ。
「金かかってんねー…」
そう呟いても今はただの強がりにしか聞こえない。
トントン
ノックと共に人が二人入ってきた。
「亜美……」
大翔のつぶやきはきっと届いてない。
「お嬢様、お茶はいかがなさいますか?」
「いらないわ」
「かしこまりました。では失礼します」
使用人らしき人が出ていった後、亜美は大翔を見てため息をはいた。
「私の顔はため息が出るほど美しいですか?」
「頼む、黙ってくれ」
不思議だ。
あんなにも緊張していたのに、亜美がいるだけで軽口もたたける。
ゆっくりと大翔の前のソファーに腰を下ろした亜美。
「んで、いきなり何の用?」
「いきなりとは失礼だね。電話に出なかったのはそっちでしょ?」
実はさすがに……と思って、亜美の家につく前に電話した。で、出なかったということだ。
「……それは、」
言葉が後から出てこないところを見ると、意図的に出なかったんだろうなぁ。
分かりやすい奴。



