陽が立ち止まったのは音楽室の裏側にある出口から出てすぐの所にある花壇だった。
「……亜美、また何か余計なこと考えてるだろ」
疑問文でないところをみると彼の中では確定事項なのだろう。
「どうしたの?いきなり」
「お前、ココから消える気だろ」
ドキッとした。
何も言っていないし、行動にも出した気はない。
それでも陽は気が付いた。
――誤魔化せないなぁ……
亜美は言うことにした。
もう決定していて、覆すことのできない事実を。
「実は今年度で日本とはおさらばするの」
にっこりと、未練なんてなさそうに亜美は言う。
「詳しく」
「四月からアメリカにある支店で支店長しながら、あっちの高校にかようことになったの」
チャンスだ、これは。
亜美が会社を継ぐために、立派な経営者になるために、海外留学は必要不可欠なのだ。
いつ行くか、それだけが決まっていなかった。
亜美が決めたのだ。
高校生である今、亜美は今しかないと思ったのだ。
できるできないの問題じゃなくて、やらなければならないのだ。
亜美は決めていた。



