失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿




「俺は大翔が大好きだ」


「はいはい」


少し高いシュークリームを陽に見せたら真顔でそんなことを言い、大翔に軽くあしらわれていた。


「まぁ、迷惑料ってことだ」


「ごちー」


大雅がおまけで買ってきたクッキーを頬張りながら言った。


「粉飛ぶから喋んな」


「ほんとはうれしいくせにー」


「きもい」


「うっせーな」


亜美は大雅と大翔の言い合いをただ眺めていた。


絶対に忘れないように。


この目に、色褪せないように焼き付け。


「……亜美、」


もっと見ていたいのに、陽が亜美を呼んだ。


「どうしたの?」


「ちょっと話がある」


「ん?」


陽はこの音楽室でその話をする気はないらしい。


しばらくしたら陽は音楽室を出ていった。


――ついてこいってことか


何も言わなかったけど、その目は反論を許さず、亜美がついてくるのがわかっているかのように。


まぁ、ついていくけどね。


「ちょっといってくるわ」


誰も聞いてなくても亜美は声をかけてから音楽室を出た。



出てみれば陽は少し先を歩いていた。亜美はため息をし、後を追った。