陽はあのあと口を閉ざし、ただ扉を見つめていた。ずーっと。
でも亜美は多分終わっても帰って来ないだろうと思ってはいた。
ブーブーブー
陽の携帯がバイブのせいで揺れた。
三回でバイブは切れ、陽はカチッと携帯をスライドさせた。
そして――
「……明日、大翔学校来るとさ」
誰もが気にしていない風を装いながらも、陽の言葉に耳をしっかりばっちり傾けていた。
「なんて書いてあったんだ?」
大雅が雑誌を読みながら聞いた。
たぶん字は目に認識されてない。ただの照れ隠しだ。
「……あほ女がうちに乗り込んできた笑い。しかもうちで兄貴と口論していきやがった笑い。とりあえずあほ女のおかげで笑いまくったから学校行くわ手」
「絵文字、笑いは読まなくていいから」
陽はしっかり、大翔のメールに忠実に読んでいた。
「ってか口論って……。さすがだな」
「俺にはできねぇ」
「俺もだよ」
颯太と大雅がこんなことを話しているなんて亜美は知らない。
「亜美ってさ、本当にお嬢様なんだな。俺、あの雰囲気の変化、びっくりしすぎて声出なかった」
大雅が言った。



