会場に入ると、見えたのは懐かしい顔。
「春、早紀!」
亜美の声に反応して、先に来ていた二人が振り返った。
「亜美!」
落ち着いた雰囲気と綺麗な声。
亜美の名前を呼んだのは、早紀だ。
彼女は幼なじみの1人。
その横にいるのは春。
長身がスーツによく栄える。
そう、このパーティーは幼なじみが久しぶりに集まるために武が計画したのだ。
「……お久しぶりですね。皆さん」
一応深瀬亜美を作ってきたのだ。ちょっとは使わないとね。
「よそよそしいな。ここには誰も入れないようにしてある。いつも通りでいい」
「武!」
いきなり聞こえてきた武の声にみんなが驚いた。
「今日は日頃のストレス発散Dayだ」
“作っている”のはみんな同じだ。
武の言葉を聞いた瞬間、春はネクタイを緩め、早紀は幼い笑顔を浮かべた。
「ネクタイとか首閉まる。殺す気としか思えない」
「うちなんて華道の家元だから笑顔禁止だよ?あ、家元関係ないか。微笑みってなんだっつーの」
うん、こんな環境であたしは育ったんだな。
あたしがこうなったのもわかる気がする。



