失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿




車を運転するのは佐伯さんだ。


亜美は1人、早々と過ぎていく景色をひたすら眺めていた。


その景色が大きな家ばがりでうめつくされはじめた頃、金井家が出現してきた。


車が止まり、しばらくすると佐伯さんがドアを開け、手を差し出す。


亜美はその手を静かに握り、車から出た。


こんなときの佐伯さんはめちゃくちゃかっこいい。


普段もそれでお願いします。ってくらいだ。


「深瀬様ですね?すぐにご案内いたします」


優しいほほ笑みを携えてきたのは金井家の執事、遠藤さん、55歳。


小さい頃よく遊んでもらった。


55歳とはおもえない落ち着きと冷静さで、みんなから一目を浴びている。


「よろしくお願いします」


頭を下げて、亜美たちの控え室を後にしていった遠藤さん。