亜美が目を覚ましたときの顔を瑠伊は忘れることはないだろう。
あの何も映ってないような瞳を見た瞬間、瑠伊は寒気がした。
それと同時に嫌な予感もしたのだ。
毎日のように亜美の寝顔を見に来る隆。
仕事で遅くなるのに、寝顔だけでもと……
瑠伊の嫌な予感が的中したのは事故から何日かたった頃だった。
「階段から落ちるなんてね」
なんて言ったか思い出せないくらい動揺してしまった。
亜美の言葉が信じられなかった。
ありえるとも思えなかった。
だって聞いたことあるか?
思い出したくない記憶を忘れて、新しい記憶に書き替えるなんて。
階段から落ちた。
それは、そうだったらいいなぁ、という亜美の願いだ。
現実は違う。
亜美の母は亜美を守って死んだ。
それは愛するわが子だからこそできた事なのだろう。
それを隆は責めようとはしない。
むしろ誇りに思っている。
だから、決して、亜美が殺したなんてことは無い。
そう話を隆が締め括って、亜美の聞きたかった話は終わりを告げた。



