あの日、亜美と瑠伊と母は3人で図書館に出かけていた。
理由はよく覚えてない。
ただいつも一緒に図書館に行ってくれていたのが母ではなく、その頃の隆の秘書だったため、久しぶりの母との外出に、興奮していたのを覚えている。
歩いてたときだった。
『っあ!お母さん見て?蝶々がいる!』
『亜美、危ないから離れちゃダメよ』
『――待って!』
夢中で追い掛ける亜美に母のその声は届かない。
『だめっ!亜美!』
蝶が道路の真ん中を通る頃、亜美は大きな音を聞くことになる。
『あみぃぃぃぃいいぃぃぃい!!!!』
母の叫ぶ声が響いた。
その声が聞こえた瞬間、母は亜美を突き飛ばした。
そのおかげで亜美は打撲だけですんだのだ。
母の命と引き替えに。
亜美が病院で目を覚ましたとき、瑠伊は不覚にも泣きそうになっていた。
片割れだからこそ、痛みがわかるのだ。
全部分かるわけじゃないけど、何かを感じて、それに瑠伊の体は反応していた。



