その日は珍しく亜美と瑠伊と母の千佳と三人で図書館にいく途中だった。



優しく、いつも笑顔を絶やさない母は2人の自慢だ。



蝶が飛んでた。




普通のアゲハ蝶。



『っあ!お母さん見て?蝶々がいる!』



『亜美、危ないから離れちゃダメよ』



『――待って!』



夢中で追い掛ける亜美に母のその声は届かない。


『だめっ!亜美!』



蝶が道路の真ん中を通る頃、亜美は大きな音を聞いた。


『あみぃぃぃぃいいぃぃぃい!!!!』



母の叫ぶ声が聞こえた。



それからドンッっていう大きな音と、小さな衝撃。








――――痛い




亜美が目を開けて最初に見えたのはアスファルトの灰色。



『お母さん……?』



亜美が次に見たのは、母のまわりに水溜まりのようになっている赤色。




『……お、かあ、さん?』


傷だらけ。
血まみれ。
横たわるその姿には、笑顔ではなく、激痛に歪む表情。




『いやぁぁぁああぁぁぁぁぁあぁぁあ』



頭を抱えることでそれから目を逸らした。