音楽室を出てもイライラはなかなか消えてくれなかった。
何であんなにイライラしたのか分からなくてまたイライラする。
どうして亜美のあの青白い顔を見てイライラしたんだろう。
それが分からなくてまたイライラする。
「〜あぁ、イラつく」
ダメだと分かっていながらも、花壇の花を蹴飛ばした。
そんなことをしても、気持ちは晴れないし、むしろ散らばった花びらと土がイライラを増幅させる。
「っあ」
だから、その時、後ろから聞こえてきた誰かもわからないその声に、逃げた。
「あ゛?何か文句あんのか?」
喧嘩なんて意味ないのは知ってる。
でも、誰かを殴りたくて仕方なかった。
「っ、いや、別に……」
大翔が蹴ったことによって散らばった花をとても悲しそうに見つめながら、彼は呟くように言った。
「……なんか、ムカつく」
「え?」
「ムカつくって言ったの」
怒りを見えないように、だけど分かりやすいように、なるべく満面の笑みで大翔はいった。
――気付いてくれ。それで逃げてくれ
じゃなきゃ、俺はお前を、ぐちゃぐちゃにする。



