少しでも長くこの場所にいることを拒否するように、亜美がいなくなった。


「なぁ、何で、あんなこと聞いたんだよ」


はじめは大翔だった。


「わかんね」


何でだよ。今、すげームカつく。


「なぁ、何で聞いたんだよ。あぁなるって、わかんなかったのかよ!お前があんなこと言わなければ、亜美のあんな顔を見なくてすんだのに」


――――止まらない


おかしい。俺らしくない。全然。


陽を責めるのは間違ってるって分かってるのに……分かってるのに、とまらない。


「金井からも止められてた。なのに……」


「俺は、亜美をもっと知りたい」


その言葉に、大翔は笑った。


「俺はさ、亜美に何があったか知らない。でもなぁ、あの金井が、“暗闇”って言ったんだぞ。そんな簡単に俺たちが触れていい問題なわけねぇだろ」


なんで、



なんでわかんねぇんだよ。



「聞いて、お前は背負う覚悟があんのかよ。陽、お前はやっぱり甘いよ」


甘い。


陽を表す言葉はこの一言だ。


「わりぃ、言い過ぎた。頭冷やしてくる」


イライラしている頭を冷やすために、大翔は音楽室を出た。